長年大規模マンションの管理員として勤務していると、トイレの詰まりというトラブルが、いかに簡単に平穏な日常を破壊するかを嫌というほど見てきました。ある月曜日の朝、一階のエントランスまで水が漏れてきているという通報があり、急いで上階へ向かうと、そこには地獄のような光景が広がっていました。四階のある住戸でトイレが完全に詰まり、しかも本人が外出中に給水弁の不具合が重なって水が流れっぱなしになり、家全体がプールのようになっていたのです。マンションの床構造は、コンクリートの隙間から水が入り込むと、予想もしない場所から階下へ染み出します。その時は結局、一階までの全住戸の家財が汚水にさらされ、被害総額は一千万円を超えました。私が見てきた中で、マンションのトイレを詰まらせる原因のトップは、やはり紙の過剰使用ですが、意外に多いのが健康食品やサプリメント、あるいは食べ残しをトイレに流すケースです。特に脂分を多く含むスープなどは、冷えると配管内で凝固し、トイレットペーパーと合体して石のように硬くなります。マンションの配管は共用部分へ向かうほど太くなりますが、住戸内の枝管は意外なほど細く、しかも曲がり角が多いため、こうした異物は一度止まると自力で動くことはありません。また、最近増えているのが子供が誤っておもちゃを流してしまうケースです。本人に自覚がないため、原因が特定できずに何度も詰まりを繰り返し、最終的に便器を脱着して中からプラスチック製の車が出てきたこともありました。マンションでトイレの異変を感じたら、まずは他の水回り、例えばキッチンや風呂場の排水もチェックしてください。もし全部の流れが悪いなら、それはあなたの部屋の問題ではなく、マンション全体の竪管が詰まっている可能性があり、その場合はすぐに管理組合の出番となります。しかし、トイレだけが流れないのであれば、それは間違いなく専有部の問題です。管理員としてアドバイスできるのは、詰まりが発生した時に慌ててインターネットで見つけた格安業者を呼ばないことです。中には、不当な高額請求をしたり、マンションの配管知識がないために配管を突き破ったりする悪質な業者も存在します。まずは管理会社が提携している信頼できる業者を紹介してもらうのが、最も安全で確実な解決策です。日々の暮らしの中で、トイレという文明の利器への感謝を忘れず、異物を流さないという基本を徹底することが、自分と隣人の幸せを守ることに直結するのです。
マンション管理員が語るトイレつまりトラブルの凄惨な現場と対策