私たちの住まいを支えるインフラの中でも、壁や床下に隠された排水管は、その存在を意識されることが少ない部分です。しかし、この見えない配管にも、他の建材と同様に「寿命」が存在します。特に、毎日汚水が流れる過酷な環境にあるトイレの排水管は、経年によって確実に劣化が進行しており、その限界を超えると、詰まりや水漏れといった深刻なトラブルを引き起こします。排水管の寿命は、その材質によって大きく異なります。現在、戸建てやマンションで主流となっている「硬質塩化ビニル管(塩ビ管)」の耐用年数は、一般的に40年から50年程度とされています。塩ビ管は錆に強く、耐久性も高いですが、長年の使用で接合部分の接着剤が劣化したり、地震などで管自体に負荷がかかり、ひび割れや破損が生じることがあります。一方、築40年以上の古い住宅やマンションで使われていることがある「鋳鉄管」は、より注意が必要です。鋳鉄管の寿命は30年から40年程度とされ、最大の弱点は「錆」です。内部に発生した錆こぶが排水の通り道を狭め、頑固な詰まりの原因となるほか、錆が進行すると管に穴が開き、漏水を引き起こすリスクも高まります。では、排水管が寿命を迎えつつあることを示す「劣化のサイン」とは何でしょうか。最も分かりやすい兆候は、「頻繁に発生する詰まり」です。これまで問題なかったのに、ここ数年で何度も詰まるようになった、という場合は、配管内部に除去困難な尿石や錆が蓄積し、内径が狭くなっている可能性が濃厚です。また、「原因不明の悪臭」が続く場合も、排水管に亀裂が入り、そこから下水の臭いが漏れ出している、あるいは接続部のパッキンが劣化しているサインかもしれません。そして、最も深刻なのが「排水管からの水漏れ」です。床下や階下の天井にシミができた場合は、すでに劣化が限界に達している証拠です。これらのサインが見られた場合、行うべき工事は、床や壁を剥がして古い配管を新しいものに交換する「配管更新工事」となります。これは費用も時間もかかる大掛かりなリフォームですが、建物の資産価値を維持し、安心して暮らし続けるためには不可欠な投資と言えるでしょう。