給湯器の修理現場に二十年以上立ち続けているベテラン技術者の視点から見ると、冬場の故障相談の約八割は、適切な水抜きが行われていれば防げたものです。しかし、多くのお客様が「水抜きをしているつもり」で失敗しているケースも少なくありません。その典型的な例が、水抜き栓を緩めるだけで満足してしまい、空気を入れ替えるための「蛇口の開放」を忘れているケースです。給湯器の構造上、水抜き栓を外しただけでは、ストローの端を指で押さえた時のように水が内部に留まってしまいます。配管内に空気を取り込むために、家の中の蛇口を開けて初めて、中の水は重力に従って完全に排出されるのです。また、もう一つの落とし穴は、給湯器本体だけでなく、そこに至る給水管の保護を忘れていることです。給湯器の中は空でも、外の配管に水が残っていては、そこから凍結が始まり、結果として給湯器の接続部を破壊してしまうことがあります。私たちはプロとして、水抜き作業の際には必ず「配管の保温材」に破れがないか、露出している部分がないかも併せて確認することをお勧めしています。さらに、最近の節水型シャワーヘッドを使用しているご家庭では、シャワーヘッド内の止水スイッチによって配管内に水が閉じ込められやすく、水抜きが不十分になる傾向があります。水抜きをする際は、シャワーヘッドを床に置き、スイッチを全開にして中の水がすべて抜けるように配慮してください。私が修理に伺う際、最も悲しいのは、購入して一年目、二年目の新しい給湯器が凍結で壊れているのを見た時です。最新の機種には高度な凍結防止機能が備わっていますが、マイナス十五度を下回るような極寒の日や、強風が直接当たる場所に設置されている場合は、機械の限界を超えてしまいます。だからこそ、最終的には人間の手による水抜きが最強の防衛手段となるのです。水抜き栓はプラスチック製のものも多く、無理に力を入れると割れてしまうことがあるため、ゆっくりと慎重に回すのがコツです。こうした細かな作法を一つひとつ守ることが、厳しい冬の夜に給湯器という大切なライフラインを守り抜く唯一の道となります。
給湯器の専門家が語る正しい水抜きの作法と落とし穴